
コラム
40代を過ぎたら一人で歩く訓練を
2025.09.19
昨日の静けさのレッスンは、人生のターニングポイントを通過した女性3名で行いました。いつもご参加いただき、ありがとうございます。
私は、20代からスタジオ空間でレッスンをしてきたことで、この五感にある種のセンサーがあります。
人は、外見で存在を示す他にもう一つ、目に見えない雰囲気という存在感があります。
それは、年齢、性別、性格、立ち居振る舞い、その人の内的なエネルギーから香りたつものです。
レッスン中の私はメガネを外しますので、生徒さんのお顔は見えません。
その代わり、呼吸のリズム、息の音と長さ、感情の温度を感じ取り、レッスンを進めています。
これらは、目で確認できるサインより深く相手を知る情報です。
この情報をもとに、身体の動きを通して静けさの境地へ誘います。
当方のレッスンには、ガンガン動いて煽る人はいません。
だから、生徒さんは安心して素直に自分に向き合うことができます。
スタジオレッスンは、周囲に風を立てるように動く人がいると、それにつられて動いてしまう傾向があります。
そうすると、自分らしく動けないので、ストレスになります。
庵には、その環境を再現しないように努めています。
そのため、人数を制限し、一般的なヨガレッスンの価格と比較したら倍になりますが、団体レッスンでは得られない静けさと安心感、先生から習っているという充実感と、丁寧なレッスンから得られる効果をご提供しています。
これは、私の30年以上にわたるスタジオ空間でレッスンをしてきた答えです。
私はここで、「静けさ」という力を手に入れた未来へ導いています。
それは、どんな時でも、どんな境遇におかれても、内側の静けさを自分で生み出せる女性になって生きる未来です。
「皆んなが持っているから」「皆んながやっているから」といった、皆んなを選択の基準にできるのは、人生の前半まで。
更年期を迎えたら、そろそろ一人で歩く練習をはじめる時だという自覚をもっていただきたいと思います。
なぜなら、更年期の次は、老年期が、そして、その後は死が待っているからです。
世間の情報ばかりに接していると、いざそれが自分に訪れたとき、受け入れられなくなります。
死ぬときは一人、誰でも最後は一人になるのです。
「あの人と一緒」「皆んなと一緒」はない。
最後は、静かに、一人で旅立っていくのです。
だから、静さを、心と身体に訓練すること、魂を感じられるように、魂とは何かを勉強しておくことも必要だと思います。
一人で旅立つことを受け入れられなくて、泣く夜を過ごさないように。
精神的な強さと知識を身につけることを始めていただきたいと思います。
昨日のバガヴァッド・ギーターの講座で生徒さんに、「インドでは、ヨーガは別名死の準備と言われてたんですよ」とお伝えしました。
これは、ご高齢の指導者の方から教わったことです。
人は、誰しもその瞬間は、前世で体験した死の瞬間を記憶からよみがえらせるのだそうです。
死とは何か、魂とは何か、人はなぜ生まれるのか。
このことを全く知らなければ、その人にとって死ぬことは、恐怖でしかなくなるでしょう。
その恐怖の不安の記憶が、今回の瞬間にもよみがえってこないように、前回とは別の意識でその瞬間を迎えるために学んでおくのです。
私は、39歳でお亡くなりになった生徒さんに、入院先のベッドの傍らでバガヴァッド・ギーターを教えたことがあります。
彼女は、自分の余命をわかってたのですが、死の意味を知っていると知らないでは、精神的な状態に大きな差が出ることを、彼女から教えられました。
それまでは、死ぬことを怖がり、「眠りたいけど、目を覚まさなかったらどうなるかと思うと怖くて眠れない」と仰っていたからです。
それでも、その瞬間が近づいてきた頃、「先生、これ(死を受け入れること)が私のヨーガなんですね」と、はっきり言われました。
それから数日後、青森の出張から戻り、病院に駆けつけたら、彼女のベッドが静かに整理されていました。
看護師の方が、「今朝、お亡くなりになりました」と。
私は、「どなたかと一緒でしたか?」と伺うと、看護師さんは「いいえ、お一人でした」。
バガヴァッド・ギーターは、魂を救うための聖典です。
魂が、競争と争いのある地上ではなく、魂が本来あるべき場所へ還っていくために携える知識があるのです。
亡くなった人の成仏を願いお経をあげるのと同じで、バガヴァッド・ギーターは、肉体を持って生きている私たちの魂のためのお経です。
彼女は、第2章までしか読めませんでしたが、そこには魂の本性が書いてあります。
魂が昇天していける章を聴いて旅立てて良かったと、今でも静かに思い出します。