
コラム
変化の直前で現れるエゴの声を聞き分ける
2025.06.27
人は、一生のうち何度か人生の転換期を迎えます。
この転換は、意識の移行(シフト)のことを言います。
野心、野望から意義へ。
利己から、利他へ。
そして、やがて大転換を迎えます。
エゴの声に従ってきた人生から、
魂が目的とする意義ある人生への移行。
人生観も、人格も、ここから大きく変わります。
仕事や人間関係、環境も変化します。
魂が目的とする人生に移行するときは、
エゴの経験が手放れていくとき。
人の承認を得ようと頑張ったり、
誰かの期待に応えようと無理したり、
富を手に入れよう、功績を上げよう、
貯蓄しよう、資産を増やそう、
こうした欲が失せていきます。
もっと頑張らないと!
確実にやらなければ!
人より優位でいなければ!
自分を責める癖も失せていきます。
競争心、優越感、虚栄心といった感情も解放されます。
この感情には、キャリア、お金、ステイタスといった所有物が付いています。
この社会では、これらは人を評価するときの基準。
だからエゴは、それを手放すことに恐れを抱きます。
アイデンティティを失うことでもあるからです。
私は、ヨガインストラクターから現在の自分に変化するまでの27年間、
自分のエゴを燃やす訓練をさせていただいたのだと思います。
私は、ポーズではない。
私は、集まった生徒の数ではない。
私は、インドではない。
「ヨーガを教えている」というと、
世間で思われている「ヨガ」のラベルを貼られます。
すごいポーズができるんですね〜
だからお綺麗なんですね〜
お若いですね〜細いですね〜
チヤホヤされます。
他人の脳は目の前の私ではなく、
どこかで見て脳に保存してある
ヨガインストラクターのイメージを見ているからです。
ここを勘違いして、本心じゃない賞賛に陶酔してしまうと、
このアイデンティティが根をはって育ちます。
だから、このアイデンティティの幕が閉じられるとき
エゴの抵抗に苦しまなければなりません。
シフト後は以前とは違う自分になります。
だからもし、あなたが今ヨーガを習える環境にいたら、
この変化の力に、耐えられるエゴにしておくべきです。
エゴも苦しいのです。
アイデンティティーを奪われるのですから。
必死に抵抗してきます。
その抵抗は、心身におよび不調や不健康につながっていきます。
だから、自分のエゴに教えこみ、
育てなければならないのです。
このことを、エゴを昇華すると言います。
私が生徒さんたちに、
魂の光/ ヨーガ・スートラを学ぶように勧めている理由は、ここです。
自分のエゴを教育するためです。
エゴを洗練させるため。
魂の声に従順なエゴに成長させるためです。
エゴは、巧みな口実で変化を滞らせます。
ヨーガを続け、やっとある段階までたどり着いた。
それなのに、そこでまた次の欲望にかられてしまいます。
この欲望は、物欲や出世欲に限ったことではありません。
幸せを選ばないこと、改善や治ることを望まないこと、
変わることを望まないこともエゴにとっては欲望です。
人生の転換期に必要なシフトをしない限り、
片目だけ開いたような状態で、
「変わる時期なのに変わらない」時間が過ぎていきます。
人は、変わる直前になると魔がさすもの。
「私は、このままでいいんだ」という喜びが湧いてくる。
これは、教えや学びという規制が外れる喜びである場合があります。
「今の自分を認めよう」というエゴの声。
これが本当の自分の声か、エゴの声か聞き分けてください。
あるいは、急に家庭の義務や仕事を思い出します。
なぜか、家族や家庭の問題、仕事が浮上してくるのです。
「こんなことをしている場合じゃない」
「今まで何もしてあげられなかったから、これからは私がしてあげよう」
そうして、自分の選んだ道や教えを放棄してしまう。
見限ってしまうのです。
これは、変容の道における本当に「あるある」なのです。
指導者の間では、古代から注視されていることです。
私たちヨーガ指導者は、
この「エゴの声」があることを前提にヨーガ指導を行っています。
エゴは、変化の直前にこそ大きく現れる。
皆さんも、このことを心の片隅で覚えておいてください。
このエゴに屈服しないようにヨーガを続けてください。
ヨーガは、エゴの力を弱小化させ、
魂に従えるエゴに変容させていく道です。
エゴの声と、魂の声を聞き分ける耳を育ててください。
その開いた耳を、またエゴに塞がれてしまう。
ということにならないように、気をつけて生きていきましょう。