
コラム
自分の中心に還る「しずくの庵(いおり)」に至るまで
2025.06.14
静けさの中にこそ、本当の自分がいる──
そう気づいたのは、ずっと欲求につき動かされて生きてきた人生の果てでした。
1988年、私はエアロビクスのインストラクターとしてキャリアを始めました。
10年にわたり肉体の可能性を探求しながらも、何かが違う・・・
この感覚がずっとありました。
友達も多く、スケジュール帳に余白はなく、
派手な外見、海外旅行、情熱的な恋愛、華やかな人生。
そんな自分に酔っていました。
そんな中、1998年に出会ったのが「ヨーガ」でした。
単なる身体技法ではなく、心を調え、魂の静けさに触れていく奥深い道。
その美しい世界観に強く惹かれ、歩みを深めるようになります。
2007年にはインドに渡り、ヨーガの科学と療法の両面から本質を探求。
帰国後は、東京・港区の禅寺に拠点を構え、
本質的なヨーガを伝える稀有な場をひらきました。
その土地柄、経営者や各界のリーダー層とのご縁も生まれ、
ステイタスや立場を越えて、
人が“魂の声”に立ち返っていくための個人指導を重ねてきました。
2009年、ある一つの想いからヨーガビザを取得して再びインドへ。
「魂の道で迷った人々を、優しく軌道に戻す“灯台”のような存在でありたい」。
現代のビジネスコンサルで、こんなことを言ったら、
「抽象的すぎる」
「それは市場にあるのか」と
詰め寄られることでしょう。
しかし、この淡い想いは、精神的指導者としての覚悟に至るまでの力を秘めていました。
以来、表に立つことよりも、静かに「本物のヨーガ」を伝えることに心を尽くしてきました。
2019年には、ヨーガ・スートラを
再現性のある実践プログラムにまとめた『覚醒のヨーガ』を出版。
また、2023年に母の認知症をきっかけに、
自ら編み出したヨーガを「認知ケアのための脳活ヨガ」として再定義。
“心と脳の静けさ”がもたらす健やかな老いの在り方を伝えはじめています。
人生が、精神的にシフトしていく狭間の揺れ
人生には、二つの成功があります。
この社会にとっての「成功」と、
魂にとっての「本当」と。
これらを、明確に天秤にかける瞬間が、人生に訪れます。
そのとき私の中でも、何かが静かに、確かに、変わり始ました。
この変化を、どうして言葉にできましょう。
でも、経験したことは自分の身体でわかります。
私も乗り越えてきた、その夜の深さを言葉にすることで、
今まさにその夜にいる女性たちの灯りになると思い、
このコラムに「あるヨギーニの自叙伝」として残しました。
その夜が明けたとき知ったこと、それは、
「魂とつながり、心静かに生きること」です。
人生のシフト、人生の転換期。
具体的から抽象的へ、物欲から精神へ、利己から利他へ、自我から真我へ。
このように、人生が質的に変わるときは、これまでの生き方が妨げの力に変わります。
頑張ること、戦うこと、無理すること、
努力して勝ち取ること、勝ち誇ること、
認められようとすること。
頭で考えること、合理的に手繰り寄せようとすること。
この欲求が、逆効果になります。
それまでは、その欲求で動くことで上手くいっていた。
しかし、その”上手く”は、これまでの人生のステージだから通用した力です。
この先のステージでは通用しない、使えば使うほど摩擦を起こす力なのです。
だから、人間関係で衝突する、周りと会わなくなる、
身体が不調になる、精神的に苦しくなる。
多くの人がこの力関係を知りません。
何度もなん度も、これまでと同じ自分で、同じ力で
深い孤立と「転落感」から脱しよう、乗り越えようとします。
私もそうでしたから、よくわかります。
インドから戻って開いた教室には、誰もきませんでした。
誰も来ないレッスン、静まり返った部屋、流れていくお金
──それでも消えなかった“魂の想い”。
これは、まさに多くの女性が人生のどこかで感じている
「見捨てられたような感覚」や「信じてきたものからの孤独」と重なります。
魂の想いとは、美しさと静けさだけではなく、
人格や生き方が、魂の想い一貫になるまでは、痛みと孤独、喪失と誤解に満ちた道です。
それでも、人生にこの時期がやってきたら、一貫させなければなりません。
誰に評価されなくとも、自分の中にある“確かな声”に従って。
私の言う”静かに生きる”とは、清貧になることではありません。
自分を抑える、控える、ということでもなく。
この静けさとは、
欲求からものごとが成立していく感情が揺れ動く世界、
ここに巻き込まれず、達観して生きる、ということです。
かつて私が感じていた“満たされなさ”の原因に、
魂との断絶があったように、
多くの人が、この世界で自分の中心を見失い、迷い、悩み、生きづらさを抱えています。
だからこそ今、私は、**魂と調和しなおす静かな道”
Shanta yoga(還心ヨーガ)を伝えています。
それは、誰かの教えに依存するのではなく
自らの内にある真理と再びつながっていくヨーガです。
ここ「しずくの庵」は、そんな還心の旅路の途中に、そっと灯る場所でありたいと願っています。
脳を進化させ、自己変革を実現
ホームページのトップページに置かれてあるこの言葉には、
私が長年にわたって探究してきた、
「変化ではなく還ることによって進化が起こる」
この真理が宿っています。
けれども今、私が伝えることは、
努力や成果を追い求める量的な“進化”ではなく、
魂の静けさに還ること。
心と脳が静けに調和するとき、
魂の力が目覚めはじめる、ということです。
これが、質的な変化。
自然に目覚めていく“本質的変容”です。
ただ、「心と脳」と「魂」をつなぐ、とは
言葉で見れば簡単そうですが、
心身ともに苦しみが伴うものです。
私も経験した、どれほど深くと言っても表現しきれない葛藤。
今となっては静かな記憶となったその涙が、
誰かの魂に灯をともすために流れ出そうとしています。
しずくの庵になって。
しずく、それは、神のわけ御霊の魂のことであり、あなたの涙でもあり。
庵(いおり)は、魂の家であり、あなたの心の安堵の場。
安心して泣ける場所。
しずくの庵は、駅からまっすぐ歩いて10分ほどです。
参道のように続く一本道の先に、しずくの庵の屋根が少しずつ近づいてきます。
この道は、今日まで日本の至るところから訪れた方々によって築かれた道。
今のあなたと同じ想いを抱いて。
その想いとは、人間の欲でも見栄でもなく、魂の想いです。
見た目は何の変哲もない、古びたビルや
無秩序に並ぶお店がポツポツ続く、小さな町の古びた道。
スタバも、カフェも、おしゃれなものは何もありません。
魂が触れたヨーガによって「静けさ」「客観視」「自己への信頼」
「魂の道」へと還っていく、生徒さん一人ひとりの真摯な足跡があります。
駅の名も、三位一体を象徴しています。
ここは、魂に導かれてきた人の想いから生まれた庵なのだなと、
いつか、あなたの目にもそう映るようになるかもしれません。