
コラム
【あるヨギーニの自叙伝】最終章:すべての沈黙が、光に変わるまで
2025.06.02
ヨーガの聖地、北インド・リシケシ。
祈りの香りと、ガンジスの流れの中で、
私は自分の魂の奥にある願いに出会いました。
それは――
「人生をまるごと導ける、真のヨーガのグルになりたい」という願い。
資格でも、著名な師の名前でも、
もう自分の価値は証明できない。
ヨーガとは、誰かの教えを語ることではなく、
自分自身がヨーガの“呼吸”そのものになることだと気づいたのです。
その想いが通じたのか、インド大使館からヨガビザが許可され、
40歳からの5年間、私はインドで深い学びを重ねてゆきました。
ある日、ガンジス川のほとりで、ひとりの聖者が私に言いました。
「日本に帰れ。お前が教えなくて、誰が教える」
私は覚悟を決めました。
この魂の道を、日本で生きていくと。
帰国後、教室を開いた私のもとに、生徒は来ませんでした。
あれほど人気だったインストラクターの私のもとに、です。
それでも私は教室を開け続け、誰も来ない空間で、ただ一人、瞑想しました。
あの沈黙の時間が、私に必要だったのです。
承認欲求も、プライドも、慢心も――
すべてを静かに削ぎ落としてくれた、真の修行。
私はやっと、
本当の意味でヨーガに出会ったのかもしれません。
今私は、「還心ヨーガ」という名の道を歩いています。
魂の声に耳を澄ませ、心を本来あるべき場所――
魂の中心に還すためのヨーガです。
幼き日に布団の中で祈ったことも、
拒食のなかで食べられなかった日々も、
誰も来ない教室で一人座った瞑想の時間も。
すべてが、この道へと連なる光だったのです。
私はもう、光に背を向けずに生きていこうと思います。
そしてその光を、今、どこかで必要としている誰かへ――
あなたの魂に届きますように。