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【あるヨギーニの自叙伝】第三章:違う自分になりたくて、フランスへ

2025.05.25

エアロビクスのインストラクターとして活動していた私は、あるとき、すべてを手放す決心をしました。

それは、ただ辞めるのではなく、“新しい自分” を生き直す場所を探していました。

人生のリズムが変わるとき、自分の内側に何かサインのようなものが起きます。これは、自分にしかわからない感覚です。

私は、この感覚がきたとき、すぐに行動に出ました。頭で考えると、不安と恐れしか出てこないからです。

違う自分になるために選んだ場所は、エアロビクスを学ぶため何度も訪れたアメリカではなく、真逆の世界「フランス」。

フランスパンを、袋に入れずそのまま持って歩く女性になってみたかったのです。

それは理屈ではなく、心の奥からふいに湧いた「直感」でした。

「違う文化圏で、新しい自分を生きてみたい。」

1年半の滞在の中で、20代で身につけた多くのものが、跡形もなく消えていきました。

筋トレでつけた自慢のボディは、面影もなく消えてしまいました。

髪型も、ファッションも、生活のリズムも、人間関係も、暮らしに関わるエッセンスは180°変わったのはちろんのこと、言葉も、これまで話したことのないフランス語。

私は、フランスの暮らしを肌で吸収するためホームステイを選び、お料理の上手なマダムのお宅をリクエストしました。

日本から来た30歳の私を、小さな駅のホームで待っていてくれたマダム。

トレンチコートの襟をたて、サングラスをした小さなお顔の周りにスカーフが巻かれ、枝のように細い足首に黒のハイヒール。

女優さんかと思うほど、雰囲気のある女性が私の人生に登場したことで、アメリカで身につけたセンスは、ガラガラと音を立てて崩れていきました。

フランスの暮らしで、私は新しい価値観やアメリカの暮らしにはなかった暮らしの中の芸術に触れました。

帰国後は、心理カウンセラー学院で学びました。

けれど——

人は、話を聞いてもらうだけでは、心の傷は本当には癒えない。

そのことを、私自身が誰よりも強く感じていたのです。

心は、身体と切り離せない。そして、その身体もまた、ただの筋肉や骨ではない。

じゃあ、人間を根本から再生する方法って?

その問いが、静かに、けれど消えることなく私の内側に種を落としたのでした。

そしてその問いこそが、

私を「魂のヨーガ」へと導いていく、長い旅の始まりでした。