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ヨーガを市場まかせにしない

2025.09.23

今夏の業界大手ヨガスタジオの破産と全店閉店のニュースで、ヨガ業界に大きな衝撃が走ったことと思います。

それと同時に、水面下にあったこんな声がはっきりと聞こえてくるようになりました。

「これからは、本物のヨーガが残っていく」

ヨガインストラクターの数が、生徒数より増えてしまったことも、ヨーガの歪曲が止まらない原因の一つになってきました。

ヨーガの本質を知る機会のない一般人は、身近なヨガレッスンを通してヨーガを知ります。

当庵を訪ねてくださる方の多くは、それまでヨガスタジオのレッスン、とくにホットヨガを通して本当のヨーガを知りたくなった方々です。

受けてこられたレッスンを伺うと、エクササイズと何が違うのだろうと疑問がわいてくるばかりでした。

それがヨーガだと思って続けた結果、心に、またある人は身体にトラブルが発生し、当庵に辿り着いたというわけです。

以下、これまでのご相談内容のほんの一部です。

・ホットヨガが中毒になり、体重が38キロに落ちてしまった。でもやめられない。

・ねじりのポーズでインストラクターにもっと捻るように急にアジャストされ、違和感があったので病院に行ってみたら肋骨にヒビが入っていた。先方には何も言えずそのまま。

・ヨガインストラクター養成講座を3つのスタジオで受けたが、実際のレッスン開催に至れない。*このご相談は過去最も多い。

・レッスン後、なぜかいつも興奮して食欲が爆発してしまう。

・難易度の高いポーズはできるようになったが、自分自身が静まれない、瞑想できない、攻撃的になったように思う。

インドから帰国後、教室を自主開催してから、生徒の立場とヨガインストラクターの立場の両方の方々からご相談を受けてきました。

多くのご相談から言えることは、教える側も習う側も迷いの道に入ってしまっているということです。

そもそもの原因は、どこにあるかと言えば、ヨーガの根本的な目的を理解していないことにあります。

そのため、手段と目的を履き違えてしまうのです。

ヨーガにかぎらず伝統的なものは、本質的なものは変えずに核となる部分を抽出し、それを時代に合わせた内容に進化させて活用します。

ヨーガの本質がズレてしまった原因は、市場が大衆のニーズに傾倒しすぎてしまったからです。

集団意識には、運動すれば痩せる、汗をかけば痩せる、という誤解が根深くあります。

フィットネスのクラスは、このニーズに応えた方が集客できます。これは、ヨガレッスンにも当てはまります。

一般のニーズに応えながらも、ヨーガにおける健康は精神的な成長の条件としておかれていることを忘れてはならなかったのです。

それが、集客にとらわれるばかり、身体を動かすこと、痩せてキレイになること、健康そのものがヨーガの目的になってしまいました。

悪いことではありませんが、身体を動かすことや健康が人生の目的のようになってしまうのは本末転倒です。

ヨーガは、身体の悩みにしばられる人生から解放するのが目的だからです。

そして、その自由から精神的成長へと発展していくのがヨーガの目標です。

かつての私もそうであったように、多くのヨガインストラクターが自分の提供している内容に疑問を抱きながらレッスンを提供されていることでしょう。

提供する側は集客のために仕方なく、受ける側は「こんなものか」と思いながら、互いに騙し騙しだったとしても、それが続くわけではありません。

いつかは終わりを迎えることは、誰もがわかっていたことだと思います。


故人となられた先生が、私にこう言い残されました。

本物を見極めなさい、と。

もし、このコラムをご覧くださる方が、ヨーガをやりたいと思っていらっしゃるなら、当庵の生徒さんにお伝えしていることと同じことをここでお伝えします。

「本当のヨーガを教えてくれる先生を、あなたが探せるようになりなさい」。

人と人の関係は、いつかは終わります。私も、いつこの仕事に終わりがくるだろうと思いながら今を生きています。

その時、生徒さんは自分で新たに教室や先生を探さなければなりません。

自分の目で見極められるように教えています。

本当のヨーガとは何かを知ってさえいれば、情報の大海原の中からでも必ず探し出せます。

本当のヨーガを知るということは、ヨーガの目標と、目的、手段、この三つを明確に知ることです。

これを把握していれば、本当のヨーガを実践するために先生を探すとき、この三つを知って教えている人だと、すぐにわかります。

ヨーガをどこでどう実践するかは、人生において大切な選択です。

自分で選び、決め、意識的に投資できるようになってください。