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【あるヨギーニの自叙伝】第五章:人気インストラクターの葛藤

2025.05.27

ロサンゼルスでの体験を胸に、日本に戻ってきた私は、再びスタジオやスポーツクラブで教える日々に戻りました。

求められるのは、明るく、動けて、汗をかけるレッスン──

いわゆる「LAスタイルのヨガ」でした。

けれど、それは私にとって「エクササイズ」となんら変わらないものでした。

なぜなら私は、かつてエアロビクスのインストラクターだったからです。

身体を動かす爽快感と、汗をかく達成感。

その本質が「ヨーガ」ではないことを、私は知っていました。

「これは、ヨーガではない」

その想いは日々積もり、やがて内側から私を締めつけるような苦しみに変わっていきました。

本当のヨーガを求めていらしているであろう女性が、筋肉に力を入れるポーズを、苦しい表情でしている姿を見るたび胸がしめつけられました。

そんなとき、ある企業の会長から声がかかりました。

「あなたを、タレント・ヨガインストラクターとして売り出したい」

大きな仕事。メディア。名声と成功への道。

かつての私なら、飛びついていたでしょう。

でもそのとき、胸の奥深くから、静かにはっきりと響いたのです。

──インドへ行け。

それは、頭の声ではありませんでした。

理屈でも恐れでもなく、もっと深く、もっと静かなところから聞こえてくる声。

魂が、私を再び「真のヨーガ」へと導こうとしているのだと、私はすぐにわかりました。

この社会にとっての「成功」と、魂にとっての「本当」を、はじめて、明確に天秤にかけた瞬間でした。

私の中で、何かが静かに、確かに、変わり始めていました。


PS. 魂が目覚めはじめたあなたへ

もしかしたら、今のあなたも人生のどこかで「これは違う」と感じながら、

でも、それが何んだかわからず、ただ胸の奥がざわつくような日々を過ごしているかもしれません。

もしかしたら、今のあなたも

「頭の声」と「何か深いところからの声」の間で、何が正しいのかわからず、立ちすくんでいるかもしれません。

私も、そうでした。

出世の道も、名声も、チャンスもありました。

けれど、魂は静かに──でも確かに「NO」と言っていたのです。

その声は、最初とてもかすかで、かき消されそうでした。

魂が目覚めはじめるとき、

これまで信じてきた世界の価値観が揺らぎはじめます。

何を大切にしていたのか、自分が誰なのか、わからなくなったりもします。

そして、未来に対する不安や恐れが、せっかく芽生えた“本当の声”を打ち消そうとしてきます。

今いるその場所を離れないように、ないところから良いところを見つけようとするでしょう。

そんなとき、人はよく体調を崩します。

それは、内側の本質が、「もうこれ以上、自分を偽れないよ」と教えてくれているサインかもしれません。

この葛藤は、魂が眠っている人には起こりません。

それが起こっているということは、あなたの魂が、もう目覚めはじめているということ。

だから、どうか、焦らずに。

どんなに揺れても、あなたの魂はちゃんと知っています。

どこに向かえば、自分に還れるかを。

私も、何度も何度も、揺れながら歩いてきました。

でも、あのとき「魂の声」を選んだからこそ、今、ここに立っています。

この言葉が、今のあなたの静かな背中を

そっとあたためる一枚の羽になりますように。